疾患など固体のレベルでのみ発現する遺伝子(可視的表現型遺伝子)の候補をクローニングしたとき、その最終的な証明にはその野生型遺伝子を固体に導入することによって、その表現型がもとに復帰するということを示さねばならない。しかしながら、これまでの方法ではポシショナルクローニングという非常に時間と経費の必要な方法しか無かった。この点をより簡便にするため、巨大DNAをクローニングできる酵母人工染色体(YAC)を用い、トランスジェネシスを行う系の開発を試みた。今年度はマウスアルビノの原因となる遺伝子、チロシナーゼ遺伝子を含むYAC-DNAをマウスに導入し、有色の固体を得るための試みを行った。もし、YACに含まれる野生型のチロシナーゼ遺伝子が正常にマウス固体中で働けば、本来遺伝的にアルビノであるべきマウス固体は、野生型チロシナーゼ遺伝子のために体毛に着色することが期待できる。これまでに、この野生型チロシナーゼ遺伝子を含むYAC-DNAを用い、アルビノマウスによるトランスジェネシスを行った。これまでに、数百頭の産仔が得られたが、有色の固体はまだ観察されていない。その原因の1つはYAC-DNA中にしばしば生じる遺伝的欠失の可能性があるため、現在その点を含めて検討中である。
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