研究概要 |
本研究は、パルス磁場(PMF)の免疫調節への応用を目指し、各種免疫活性剤により引き起こされる免疫細胞活性化過程に及ぼすPMF効果を検討し、その作用機構を明らかとすることを目的としている。平成8年度においては、対象細胞として主にマウス脾臓リンパ球を、免疫活性剤としてConA, PHA, LPSを用いて実験を行った。PMFは、最大磁場強度2mT、周波数宇50Hz、duty 50%の矩形波であった。活性化の指標として、DNA合成能を評価した。ConAを用い、その刺激開始と同時にPMFを照射した場合、PMF効果が生じる場合(8回の実験のうち6回)、と全く影響が生じない場合(2回)があった。PMF効果がある場合、その効果は照射時間によって異なった。40分間までの照射では、活性化を増強した。PMF照射20分間における活性化増強効果は、PMF非照射でのDNA合成と逆相関を示し、最大2.6倍となった。PMFの照射時間を増すと、活性化増強効果が減少し、また、抑制的に作用する場合も見られた。ConA刺激40分後にPMFを40分間照射した場合には、PMF効果は全く見られなかった。PMF効果はリンパ球活性化初期過程に作用し、昨年度のマクロファージにおいて明らかとなったように、Caイオンの取り込み過程に関与するもの考えられる。さらに、IL-1,及びIL-2産生量を評価したところ、その産生量はPMFの照射時間に依存せず、同程度を示した。ところが、リンパ球のIL-2レセプターを測定したところ、その発現率はPMFによる活性の増強および抑制効果と良く相関し、PMFがレセプター発現に影響を与えることが明らかとなった。PHA,およびLPSによる刺激においても、ConA刺激と同様なPMF効果が見られた。 PMFはリンパ球の機能調節に応用可能であり、特に活性化増強の目的には、短時間照射が有効であることが明らかとなった。
|