本研究は、パルス磁場(PMF)の免疫調節への応用を目指し、各種免疫活性剤により引き起こされる免疫細胞活性化過程に及ぼすPMF効果を調べ、その作用機構を明らかとすることを目的とした。PMFは、ヘルムホルツコイルにより最大磁場強度2mTの矩形波(duty:50%)の磁場を発生させ、周波数25〜250Hzであった。対象細胞としてマウス腹腔マクロファージとマウスリンパ球を用いた。 マクロファージにおいては、INF-γおよびLPSによる2段階活性化を行い、INF-γ刺激時にPMFを照射し、NO産生量より活性化に及ぼす影響を調べた。PMF効果はマクロファージのINF-γ刺激応答性により異なった影響を示した。活性化が高い細胞の場合には抑制的に、低い細胞に対しては活性化増強作用を与え、さらに、その増強作用はINF-γによる活性化初期過程に最も顕著に現れることが明らかとなった。 マウス脾臓リンパ球においては、刺激剤としてConA、PHA、LPSを用いた。活性化の指標として、5'-Bromo-2'-deoxy-uridineを用いたELISA法により、DNA合成能を評価した。全ての刺激剤において同様な結果が得られた。PMF照射にる活性化増強作用は、活性化の初期過程にPMFを照射した場合にのみ現れた。その活性化増強作用は、PMF非照射でのDNA合成能と逆相関を示し、DNA合成が低い細胞の活性化をより顕著に増強することが明らかとなった。PMFの照射時間を増すと、活性化増強効果が減少し、抑制的に作用する場合も見られた。抑制的に作用した場合について、IL-1、及びIL-2産生量を評価したところ、その産生量はPMFの照射に依存しなかった。そこで、IL-2レセプターを調べたところ、その発現率はPMFによる活性の増強および抑制効果と良く相関し、PMFがレセプター発現に影響を与えることが明らかとなった。 PMFはマクロファージ、及びリンパ球の機能調節に応用可能であり、特に活性化増強の目的には、短時間照射が有効であることが明らかとなった。
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