研究概要 |
平成7年度はモデルポリマーの合成と細胞機能の評価システムの確立を推進し、準備の整った系から順次、細胞応答挙動を解析した。 (1)フェニルボロン酸基を側鎖に有する共重合体の調製: 本研究では、i)N,N-ジメチルアクリルアミドと3-アクリルアミドフェニルボロン酸(PBA)との共重合体の調製。ii)N-ビニルピロリドンと無水マレイン酸との交互共重合体に対するアミノフェニルボロン酸の反応によるボロン酸含有ポリマーの調製。という二つのアプローチにより、フェニルボロン酸含有ポリマーの合成を推進した。また、リンパ球との結合は明確に捉えるために螢光色素を導入したポリマーについても合成を行なった。得られた共重合体については、分子量、分子量分布、組成等の特性解析をGPC,NMR,光散乱等を用いて行ない細胞機能評価試験に備えた。 (2)電子吸引性置換基を有するボロン酸誘導体の合成と高分子への導入反応: フェニルボロン酸のベンゼン環に電子吸引性の置換基を導入することによって、生理条件下で安定に四配位型を形成するフェニルボロン酸誘導体を調製した。すなわち、ビス(パ-フルオロアルカノイル)パーオキサイドを用い,アニオンラジカルを経由する反応により、3-アセトアミドフェニルボロン酸のフェニル環に電子吸引性のパ-フルオロアルキル基を導入することに成功した。さらに、脱アセチル反応の後に、カルボベンゾキシグリシンを反応させ、引き続いてパラジウムを用いて接触還元によりグリシジル誘導体を得ることにも成功した。 (3)ボロン酸含有ポリマーによるリンパ球増殖の誘導とその最適化: (1)で調製した共重合体を共存させた状態でマウスリンパ球の培養を行ない、^3H-標識チミジンの取り込み能から増殖活性の評価を行ない、充分な活性を有する事を確認した。
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