研究概要 |
環境汚染物質のヒトの健康への影響を評価するときに、高濃度暴露影響を低濃度暴露影響へと外挿することと共に実験動物への影響をヒトへの影響として外挿することが重要なポイントとなっている。しかしながら、このヒトへの外挿の問題は科学的知見の不足から満足な解答が得られていない。本研究では、環境汚染物質に対するヒトとマウスの細胞における感受性を比較する目的で、アレルギー反応に関与する細胞群に焦点をあて、研究を行っている。今年度は、以下の結果を得た。1)マウス骨髄由来培養肥満細胞(BMMC)とヒト慢性骨髄性白血病由来の幼若好塩基球KU812を用い、種々の濃度のホルムアルデヒドで暴露したときの細胞増殖への影響をMTT法を用いて比較した。その結果、BMMCでは昨年の染色による方法と同様5μg/mlホルムアルデヒド以下では増殖抑制を示した。KU812では、1μg/mlでは増殖の亢進傾向がみられたが、10μg/ml以下では顕著な増殖抑制を示した。2)BMMCへのディーゼル排気(DEP)粒子の影響を検索したところ、20μg/ml以上のDEP暴露では増殖を抑制したが、それ以下では差はみられなかった。DEPのサイトカイン産生への影響では、DEPそのものの作用によるBMMCからのサイトカインの産生誘導はみられなかったが、0.8,4.0μg/mlの濃度のDEPとイオノフォアA23187刺激では、BMMCからのインターロイキン4(IL-4)とIL-6産生の亢進がみられた。20μg/mlDEP濃度では対照とくらべ差はみられなかった。抗原DNP-BSAと抗DNPIgE抗体刺激によるIL-4産生誘導系でも0.8μg/mlIDEPでIL-4産生の亢進がみられた。3)正常人のヒト末梢単核球(PBMC)への汚染物質の影響をサイトカイン産生系で簡便に評価するための予備実験を行い、PBMCへのイオノフォアA23187刺激により高いIL-4産生の誘導がみられた。
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