環境汚染物質によるアレルギー疾患の誘導や増悪作用を評価するためには、動物実験の結果をヒトでの影響として評価することが必要である。しかしながら、動物からヒトへの外挿についてはいまだ統一された見解がない。本研究では、同じ様な機能を持つヒトとマウス由来の細胞への汚染物質の作用を比較し、感受性の違いだけでなくヒトへの外挿に資する知見を提供することを目的とした。本年度は、ヒト幼若好塩基球KU812細胞と正常ヒト皮膚ケラチノサイトを用いてホルムアルデヒド(FA)とディーゼル排気粒子(DEP)の増殖能とサイトカイン産生能への影響を調べた。さらに、phorbol myristate acetate(PMA)とionomycin刺激による修飾作用への影響についても検討した。その結果、KU812細胞の増殖は、FAでは5μg/ml、DEPでは20μg/mlで有意な抑制がみられた。KU812からのサイトカイン産生においてはFAあるいはDEPのみでは産生の誘導はみられなかった。しかしながら、PMAとionomycin刺激下では、DEPあるいはFAの6時間暴露でインターロイキン6(IL-6)産生の亢進がみられた。同様な条件でTNF-α産生を調べた。DEP暴露では有意な増強がみられたが、FA暴露では差はみられなかった。ヒトケラチノサイトの実験では、細胞増殖においてはKU812と同じDEPあるいはFA濃度での差はみられなかった。サイトカイン産生においては、20μg/ml DEP暴露においてIL-1β産生の増強、IL-8産生の減少がみられたが、TNF-α産生には変化がなかった。FAのみではサイトカイン産生に差はなかった。PMA刺激を同時にくわえると、0.8μg/ml DEP、あるいは0.5μg/ml FAでIL-8産生の増強がみられた。
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