急速凍結レプリカ電子顕微鏡法で探る負荷滑り運動中のミオシン頭部構造のダイナミクス

1995 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 07458252
• 研究種目: 一般研究(B)
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 片山 栄作 東京大学, 医科学研究所, 助教授 (50111505)
• キーワード: 急速凍結電子顕微鏡法 / マイカ細片法 / ディプエッチレプリカ / in vitro滑り運動 / 負荷滑り運動 / アクチンフィラメント / ミオシン・クロスブリッジ / コンフォメーション変化

研究概要

本研究は、高い空間および時間分解能を有するマイカ細片急速凍結フリーズレプリカ電子顕微鏡法を駆使することにより、マイカ表面でin vitroアクチン滑り運動を起こしているミオシン・クロスブリッジの一瞬の構造を捉え、負荷のかかった状態で機能するクロスブリッジの構造を無負荷状態と比較することにより、筋収縮や種々の細胞運動の基盤となる滑り運動を構造的側面から解析してその分子メカニズムを追求することを最終目的として開始した。本年度はその基本となる無負荷状態での滑り運動に伴うクロスブリッジの構造変化を調べた。アクチン・重メロミオシン(HMM)の硬直複合体をマイカ表面に吸着させ、そのままで、あるいはATPを加えた直後に急速凍結しそれぞれのディープエッチレプリカを作って観察した。硬直複合体においては、HMMの頭部はほとんどが真っ直ぐ伸びた洋ナシ型の形状をとっており、アクチンの長軸方向と約45度の傾きを持って結合したいわゆる矢尻構造が明瞭であった。また2個の頭部がアクチンの長周期螺旋に沿って隣接する姿がしばしば見られた。これに対し、ATPを加えて滑り運動を開始すると大きく様相が変化した。アクチン・フィラメントは、マイカ表面にHMMを吸着した領域と下にほとんど何もない領域に分布していたが、いずれも硬直複合体よりずっと短く、場合によってはコイル状に曲がっていた。また前者の領域では滑り運動を支えるHMM頭部が観察されたがその形状は硬直結合時とは全く異なっていた。1分子の2個のHMMの頭部は丸く短く形を変え、常にその片側のみでアクチン・フィラメントを抱くように結合していた。全般的にはアクチンの長軸方向と直角に結合しているものが多い印象を与えたが、さらによく観察すると直角方向を中心とするかなりの範囲の角度分布が見られ、アクチン単量体の長さの数倍の幅で『首振り運動』をしていることが推定された。

研究成果

• [文献書誌] E.Katayama: "Effect of Caldesmcn on the assembly of smooth muscle myosin" Journal of Biological Chemietry. 270. 3319-3925 (1995)
• [文献書誌] E.Katayama: "Mode of Caldesmcn binding to smooth muscle thin filement,Possible projection of the ominategninaldamain of lalesmoh from native the filonent" Biopby sical Tournal. 68. 2419-2428 (1995)
• [文献書誌] E.Katayama: "Assessment of the qoolity of the image obtained by quick-freeze deep-ffch electron microscopy." Journal of Muscle Resedch and Cell Motility. 16. 358 (1995)
• [文献書誌] K.Yamamoto: "Myosin from alga Chara:Vnigue scrnctnre revealed by electron microscopy" Journal of Moleinlar Biology. 254. 109-112 (1995)
• [文献書誌] E.Katayama: "Geometry of the flageller motor in the cytoplasmicmen brone of solnohella thphimurinrn as detirmined by stereo-photogram ctry of quick-frexze deep-etuhrepis inges" Journal of Moleular Biology. 255. 458-475 (1996)
• [文献書誌] 片山栄作: "細胞膜内におけるべん毛モータの立体構造" 生物物理. (印刷中). (1996)