研究概要 |
識別・指向運動は視野内に複数の物体が現れたとき、動物がそれらに頭と眼球を向け(指向運動)注視し、それぞれが何であるかを判断し、そのうち注目する一つを選んで、それに頭を向ける運動である。我々はこれまでに頸の指向運動に関して、指向運動の脳幹の中枢は上丘であること、上丘-橋・延髄網様体-頸筋の経路により頸の水平運動が、上丘-Forel野-頸筋の経路により垂直運動が主に制御されることを明らかにした。本年度は指向運動中の上丘-脳幹の細胞の活動様式を調べた。上丘浅層では受容野に光点が現れた時に持続発火する細胞以外に、targetに指向し注視すると高頻度発火するsuperficial fixation neuroneを新たに同定した。上丘の中-深層では視野内の特定の部位に向くとき活動する古典的なタイプの他に、正中の注視光を正視している間は活動せずtargetを注視すると活動するtarget fixation activated neurone,正中の注視光を正視した時のみ活動するcenter fixation activated neurone,試行の間に活動するinter-trial activated neurone を同定した。橋・延髄網様体の細胞は運動に先行し、頭の水平回転速度と相関して一過性に活動するphasic type,運動に約100ms先行し頭の回転角と位置に相関するphasic sustained type,持続発火するtonic typeに大きく分類できた。Phasic type は更に発火パターンからlong lead, short lead decrement, short lead plateau, gaze type に分類できた。phasic sustained type も活動パターンからaugment, pause, plateau type に分類できた。光スポットをramp 状に30-500度/秒まで変化させると、100度/秒以下ではsmooth pursuit は見れれず、2-3回のsaccade と早い頭の運動で階段状の軌跡を描きtarget を追跡した。100-2000°/秒では早い頭の動きとsaccade で光点をとらえ、潜時は400度/秒近くで最短になった。4000度/秒以上では潜時の延長とcorrection saccade 現れた。現在この時の上丘と橋・延髄網様体の細胞の反応の定量的な解析を行っている。
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