アジア産野性マウス系統の育成と分子遺伝学的多型の解析

1995 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 07458259
• 研究種目: 一般研究(B)
• 研究機関: 総合研究大学院大学
• 研究代表者: 森脇 和郎 総合研究大学院大学, 副学長 (50000229)
• 研究分担者: 山口 泰典 福山大学工学部, 遺伝学専攻・動物細胞工学研究室, 助教授 (60191243) ; 城石 俊彦 総合研究大学院大学, 哺乳類遺伝研究室, 助教授 (90171058)
• キーワード: アジア産野性マウス / 蛋白多型 / DNA多型 / 遺伝的変異 / 系統標識 / SM系統 / ヘモグロビン-W1 / マイクロサテライトDNA

研究概要

実験用マウスのもつ遺伝的多型性は、医学生物学における生物機能研究を進めるには不十分である。また、近年ヒトゲノム研究のカウンターパートとして大きく進展しているマウスゲノム解析研究にとっても十分ではない。これらの問題を解決するアプローチとして、我々が10数年来開発育成してきたアジア産野性マウス由来の糸統群を対象に、それらのマウスの多数の遺伝子の蛋白レベルおよびDNAレベルにおける多型性を分析し、各系統の標識となる遺伝的プロファイルを作成する事が本研究の目的である。我々のこれまでの研究によって、これらアジア産野性マウスは従来の実験マウスの起源となったヨーロッパ産野性マウスとは、おおよそ100万年まえに分岐し、これら独自の遺伝的変異を含んでいることが示されている。
蛋白レベルとして、本年度は中国西域地区で採集されたマウスに見出される新しいヘモグロビン・ベータ鎖遺伝子W1のアジア産野性由来10系統群における分布を解析したが、中国西域を中心とするマウス亜種にのみ見られることが判った。この遺伝子を実験用マウス系統BALB/cに導入してコンジェニック系統を育成する課題も進めた。
DNAレベルの解析としてはW1遺伝子についてCDNAの塩基配列の分析を行い、BALB/cのもつHbb-bとの間にアミノ酸2残基の違いがあることを見出した。また、マイクロサテライトDNAのサイズにおける多型を野性由来の各統計の標識とするため、まず、三島産野性系統MSMを対象に各染色体に散らばって分解する30種のMIT-PCRプライマー用いて、実験用マウス系統との差異を分析した。その結果、実験用マウスとMSM系統との間の差異は、実験用マウス系統間の差異のおおよそ2倍であることが明らかになった。

研究成果

• [文献書誌] T.Kawashima,K.Moriwaki et.al.: "Geoqraphical distribution of Hbb in Asian mice." Jap-J. Genet.70. 17-23 (1995)
• [文献書誌] T.Sakurai,K.Moriwaki et.al.: "The first PGC mutation in ter/ter mouse." Develop. Growth. Differ.37. 293-302 (1995)
• [文献書誌] M.Yoshino,T.shiroishi et.al.: "Allele dependent recombination frequency." Genomics. 27. (1995)
• [文献書誌] M.Yoshino,T.shiroishi et.al.: "Allele dependent recombination frequency." Genomics. 27. (1995)298-305
• [文献書誌] H.Masuya,T.Shiroishi et.al: "Duplicated zane of polarizing activity in po mutant." Genes & Develop.9. 1645-1653 (1995)
• [文献書誌] T.Shiroishi: "Advances in Biophysics. Vol.31" Academic press, 119-132 (1995)
• [文献書誌] K.Moriwaki et.al: "Genetics in Wild Mice" Japan Scientific Society Press & Karger, 333 (1994)