研究概要 |
司法精神鑑定の際の被鑑定人の供述の評価について(1)言語学的供述心理学の手法を用いての数量的、客観的評価及び(2)MMRIを中心とする心理テストを用いた実験心理学手法による評価を中心とした供述態度の研究の方法を併用して、被鑑定人の供述の信憑性について発話の特徴から評価し、同時に反応時間を用いた心理テスト及び生理学的反応検査をもちいて詐病を含めた被鑑定人の供述態度を検討した。本年度の成果として次の結果が得られた。(1)詐病を中心とした供述態度の歪みを検討する供述分析的方法の開発を試みたその際にはGriceのいう質の基準を真偽の指標として用いて、(1)事実と異なる供述をする(2)供述が変遷する という2項目のいづれかに1回でも抵触する発話がなされたならその被鑑定人は広義の虚言をなしていると定義し、このような被鑑定人をB群とした。一方上記2項目に抵触する発話を全くなさない被鑑定人をA群とした。Griceの基準についてA群とB群に関する発話の特徴を比較した。その結果B群においては次のような項目に抵触する発話の特徴が見られた、(a)拒絶(b)質問者への抗議、からかい(c)話題の抽象化(d)過剰な明細化(e)訂正、言い直し(f)不快な反応(g)後悔の念を示す(h)推論を述べる これにより(1)事実と異なる供述をする(2)供述が変遷する被鑑定人がことを予測することが可能であり、虚偽や詐病が疑われる被鑑定人の供述の具体的特徴を明らかにすることができた。(2)心理テストの得点と反応時間を指標とした被鑑定人の態度の評価に関してはMMRIの短絡版(MINI)をコンピュータにより自動化し、心理テストの得点に加えて被験者の反応速度を測定できるようにしたものを用いた。対象は26人の正常被験者に、2回の検査を施行し、教示により詐病を行なわせた施行の群をM群、通常の条件で施行した群をN群とした。また、26人の精神分裂症患者に対して通常の条件で施行した群をS群として、この3群間で得点と反応時間の比較を行なった。その結果、心理テストの表れた被鑑定人の精神鑑定臨む態度の歪みをとらえる方法としては以下の指標が有効である可能性が示唆された。1、得点においては、L,F,K,の各妥当性尺度に加えて、従来研究で有効とされたF-KindexがMMPI短絡版であるMINIにおいても有効である可能性が示唆された。2、反応時間においては、第50項目までの反応時間の平均値±標準偏差の範囲を逸脱する項目数が指標として有効であることが示唆された。
|