イオン置換によるペロブスカイト型結晶構造の変形と転移のシムレーション

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 07459008
• 研究種目: 基盤研究(B)
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 堀内 弘之 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (80029892)
• キーワード: 希土類オルソアルミネート / ペロブスカイト型構造 / (Nd_x,Sm_<1-x>)AlO_3 / RAlO_3 / 構造相転移 / 粉末X線回析法 / 構造相転移化学的シミュレーション

研究概要

ペロブスカイト型複合酸化物は電導、誘電、磁性などの諸物性、超伝導酸化物の基盤物質としてのみならず、下部マントルでの物質構造の挙動の解明と云う点からも興味ある研究対象である。したがって、これらの酸化物について、構造相転移、結晶構造などの基本的情報を得ることは物性や構造の挙動を理解する上で不可欠である。本研究では、希土類元素がその原子番号に対応してイオン半径が系統的に変化する点に着目し、三方晶系NdAlO_3、斜方晶系SmAlO_3の構造の異なる2つの相の固溶体(ND_x,Sm_<1-x>)AlO_3が、(1)イオンの置換による構造の変化、(2)温度変化に伴う構造の変化、(3)構造変化に及ぼすイオン半径の変化量と温度変化との関係、などの考察を行った。試料の合成は高周波電気炉による固相反応により、構造の解析は主として通常の粉末X線、高温X線、放射光による高分解能粉末X線回折による。これらの結果、x=0.7付近で斜方晶系から三方晶系へと構造が変化することを確認し、また、組成と相転移温度に密接な関係があり、T(℃)=-1075x+795で示されることを明らかにした。これらの結果を考察すると、イオン半径が大きくなる程三方晶系へと構造が変化し易くなる。すなわち、イオン半径の大きいRを持つRAlO_3はイオン半径の小さいRAlO_3に対して相対的に高温相(相対的に低圧相)とみなして、高温高圧下での構造相転移機構解明の化学的シミュレーションを行うというこの研究のテーマの妥当性を示唆している。更に、同上の固溶体についてダイヤモンドアンビルを用いた圧力に伴う構造変化の研究も進行中であり、圧力下にある微少量の試料からイメージングプレート上に得た粉末X線回折の情報を定量的に解析するための新たなソフトウエアを独自に開発中である。

研究成果

• [文献書誌] 宍戸 統悦: "KFフラックス法によるペロブスカイト型LuAlO_3単結晶の常圧合成" 日本化学会誌(化学と工業化学). 1995(7). 573-575 (1995)
• [文献書誌] Toetsu Shidido: "Flux growth of perovskite-type RAlO_3(R=La〜Lu,except Pm)" Journal of Alloys and Compounds. 227. 175-179 (1995)
• [文献書誌] 宍戸 統悦: "オルトアミン酸希土類化合物の溶融合成" 日本化学会誌(化学と工業化学). 1995(9). 697-702 (1995)
• [文献書誌] 吉川 彰: "RAlO_3の構造:地球深部物質結晶構造変化追跡の化学的シミュレーション" 月刊「地球」. 号外12号. 159-162 (1995)
• [文献書誌] Hiroyuki Horiuchi: "Perovskite-type SmAlO_3:Analysis of twinning originated by very slight deformation from an ideal cubic lattice." Photon Factory Activity Report 1994,#12(KEK,Japan). 175 (1995)
• [文献書誌] 宍戸 統悦: "フラックス法による全希土オルソアルミネート単結晶の常圧合成およびアルコレートを原料とする溶質調整の有用性" 重点領域研究「希土類錯体の新展開」成果報告. 525-532 (1995)
• [文献書誌] 堀内 弘之: "RAlO_3(R・希土類元素)の単結晶育成、結晶構造および物性の研究" 東北大学研究部共同研究報告. 164-167 (1995)
• [文献書誌] 堀内 弘之: "微小領域X線回折による無機材料の結晶組織研究" (財)日本板硝子材料工学助成会成果報告. 13. 133-139 (1995)
• [文献書誌] 堀内 弘之: "希土類イオン置換によるペロブスカイト型構造相転移のシミュレーション" 東北大学研究部共同研究報告. 128-129 (1996)
• [文献書誌] Hiroyuki Horiuchi: "High-resolution powder X-ray diffraction:Itsapplication to the studies on the structure change of perovskite-type RAlO_3." Proc.German-Japanese Workshop on the Use of Ultra-short Wave.Photons & γ-rays for High-Preciston High-resolution Analysis of Electronic States olids,HASYLAB in Hamburg(Germany). 35-38 (1996)
• [文献書誌] 堀内 弘之: "ペロブスカイト型RAlO_3(R;希土類元素):イオン半径と温度変化による構造変化の関係" 第13回希土類討論会要旨 Rare Earths. 28. 32-33 (1996)
• [文献書誌] 宍戸 統悦: "RGaO_3(R;希土類元素)の溶融合成と性質、RAlO_3との比較" 第13回希土類討論会要旨 Rare Earths. 28. 86-87 (1996)
• [文献書誌] 堀内 弘之: "ペロブスカイト型RAlO_3の構造相転移" 日本鉱物学会年会講演要旨集. 103 (1996)
• [文献書誌] 齊藤 晃宏: "ペロブスカイト型希土類ガレートの結晶化学" 日本鉱物学会年会講演要旨集. 33 (1996)
• [文献書誌] 鄒 志剛: "Phase relation and synthetic minerals in the system of Bi_2O_3-CuO" 日本鉱物学会年会講演要旨集. 32 (1996)
• [文献書誌] 齊藤 晃宏: "希土類オルソアルミネートの高温相転移" 日本セラミックス協会第12回関東支部研究発表会要旨集. 1B16 (1996)
• [文献書誌] 齊藤 晃宏: "CeGaO_3の合成と結晶構造:CeAlO_3の構造との比較" 日本結晶学会講演要旨集. 151 (1996)
• [文献書誌] 齊藤 晃宏: "斜方晶RAlO_3の結晶構造" 日本結晶学会講演要旨集. 57 (1996)
• [文献書誌] 宍戸 統悦: "アークおよびスカル溶融反応法で合成したペロブスカイト型CeGaO_3の結晶構造" 日本化学会誌(化学と工業化学). 1996(4). 991-994 (1996)
• [文献書誌] 堀内 弘之: "微小領域X線構造解析法とペロブスカイト型相の結晶組織解析への応用" 月刊「ニューセラミックス」. 9. 1-8 (1996)
• [文献書誌] Akira Yoshikawa: "Synthese of the solid solution of(Nd_x,Sm1_<1-x>)AlO_3 and its structure relation to a series of rate earch orthoaluminates RAlO_3." Journal of Solid State Chemistry. 126. 221-226 (1996)
• [文献書誌] 齊藤 晃宏: "SRを用いた微小単結晶EuAlO_3の結晶構造解析と一連のRAlO_3(R;希土類元素)の構造への関係" 第10回日本放射光学会放射光合同シンポジウム講演要旨集. 263 (1997)
• [文献書誌] Hiroyuki Horiuchi: "Structure of synthetic Li_2(Mg,Cu)Cu_2Si_4O_<12>:a unique chain silicate related to pyroxene." American Mineralogist. 82. 144-149 (1997)
• [文献書誌] Toshinaga Tachi: "Structure of Cu-bearing orthopyroxene and its implication to the partitioning behavior of Cu2+ and the transition metal ions in the ignious processes." Physics and Chemistry of Minerals. (印刷中). (1997)
• [文献書誌] Toetsu Shishido: "Microstructure,thermal properties and hardness of the CeMO_3(M=Al,Ga)synthesized by arc-melting method." Journal of Alloys and Compounds. (印刷中). (1997)