研究概要 |
時間縮小錯覚に対応する大脳皮質誘発電位のパターンを観測するために,実験システムの整備を行った。また,日本語音声,楽器音を用いて,時間縮小錯覚に関する知覚実験を行った。錯覚の生じかたは,クリック音などを用いた条件と異なる場合があった。 グライド音やノイズを組み合わせた刺激パターンの時間構造がどのように知覚されるかについて,多数の刺激パターンを作成し現象観察実験を行った。その結果,音の「始まり」,「終わり」,「継続部」および「空白」が,それぞれ半ば独立の要素としてふるまう,との仮説を構築し,これらの要素がどのように配列されうるかを記述するような「文法」を考察した。中断を伴う純音,調波複合音,狭帯域ノイズなどの中断部分に,強い広帯域ノイズを挿入すると,中断部分がつながっているように聴こえると言う「連続聴効果」に関して,従来行われていた説明よりも,この「文法」による説明のほうが優れていることを示した。現在この点について,ネコを被験体として,単一神経細胞の活動を記録するような実験を行っている。 時間構造を持った刺激パターンの知覚における期待の効果についても生理実験を行った。 このように,時間知覚に関する種々の知覚現象について,知覚心理学,神経生理学の両面から実験的に検討を加えることができた。さらに,聴知覚一般に関しても,文法理論を導入することにより,ゲシタルト心理学に基づく様々の理論化の試みに対して,統一的な見解を示すことができた。
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