研究分担者 |
山根 康弘 自治医科大学, 医学部, 助手 (70220431)
村田 哲 自治医科大学, 医学部, 助手 (70254919)
出光 俊郎 自治医科大学, 医学部, 講師 (20237027)
鈴木 正之 自治医科大学, 医学部, 講師 (40171251)
片山 洋 自治医科大学, 医学部, 講師 (50142401)
|
研究概要 |
我々は水疱症をモデルとして研究することによって,皮膚の生物学的構造,機能,また皮膚特有の病態,免疫を知りこれを他臓器疾患にも応用できるように考えてきた. 今年度は抗原抗体反応によるSignal transductionの研究を更に発展させこれをコントロールする機構の研究を行った.即ち昨年度は類天疱瘡において,類天疱瘡抗体が,基底細胞の類天疱瘡抗原に結合するときその抗原に結合するのはIgG_1,IgG_2,IgG_4であり,IgG_3は結合した証拠は見当たらないこと,補体を活性化するのは主としてIgG_1であり,IgG_4はその能力を証明できなかったこと,IgG_1が基底細胞の抗原(恐らく180KD抗原)と結合した後,その細胞中にCa^<++>の濃度が上昇することを発表したが,今年度はその事実,多くの症例で患者のの外見上健康皮膚表皮基底細胞に結合している類天疱瘡抵抗のIgG subcalssはIgG_4が主であること,症状の軽快期に流血中にIgG_4が増加すること等の報告があるので,IgG_4が水疱症発症機序を抑制する可能性を考え,昨年の結果よりIgG_1が基底細胞中にCa^<++>の濃度上昇を起こす事実を標識としてIgG_4がそれを抑制するかどうかを確認する実験を行った.その結果IgG_4はIgG1の抗原への結合を抑制し,ケラチノサイト内でのCa^<++>の濃度上昇を阻止した(Nature投稿中)これは我々の知る限りIgG_4がIgG_1によって引き起こされる現象を抑制した世界初の証拠であると考えている.この意義は極めて大きくIgG_1とIgG_4のswitching機構を解明すれば,自己免疫疾患の治療に役立てることができると考えている.また抗原に関する研究では類天疱瘡類似の疾患で血小板が持つ抗原と共通の抗原性を持つ物質(85KD)に対する抗体が,患者血清中に発見され(Acta-Dermato.1996)その意義を研究中である.更に小児IgA水疱症の抗原の同定(Br.J.Dermato 1996)水疱形成の場である表皮基底膜のフロテオグリカンが表皮で産生されることを発見した(JID 1996).更に臨床的には,自己免疫水疱症で1例(Brit.J.Dermat.投稿中)先天性表皮水疱症で1例(Human Molecular Genetics 1996)新しい水疱症を発見したが,前者では抗原はBEAの特徴を持ちながら瘢痕を残さない症例であり,後者は筋症状を伴うEBSであり米国との共同研究でgene defectまで決定した.更に水疱症の初期に肥満細胞の関与が考えられているが,その方向からの研究も開始された(Dermatology 1996),またアトピー性皮膚炎から得られる皮膚免疫情報は水疱症の研究にとっても重要である(日皮会誌1996).水疱症では開口部粘膜に発疹するが,皮膚と異なる反応性を示すことは前に発表したが,更に進んでケラチノサイトの接着因子の発現の差を報告した(日口会誌1996).その他多くの症例に関する原著報告をし,多くの成果を上げた.抗原抗体反応とSignal transduction,IgG subclassの発症自然治癒への関与,開口部粘膜の機能の研究を水疱症をモデルにして研究するのは,水疱症の発症機構の研究にもなりこのような研究は世界的に見ても新しい研究でありこの成果は他臓器にも応用されるであろう.
|