研究概要 |
我々は水疱症をモデルとして研究することによって皮膚の生物学的構造,機能,また皮膚特有の病態,免役を知り,これを他臓器疾患にも応用できるように考えてきた。 今年度は抗原抗体反応によるSignal transductionの研究を更に発展させるため,抗原抗体反応が細胞膜脂質に対する影響を調べた。その結果は必ずしも正常IgG subclassと比較して類天疱瘡(BP)IgG subclassが脂質膜流動性を有意に上昇させることはなかった。但しBPの1例のIgG_2では膜脂質の流動性を10倍以上上昇させた(投稿準備中)。ただ今回の実験に用いたFRAD法は誤差が大きいため,NMR法等他の手段を用いて検討する余地があろう。IgG subclassに対する研究では病気のstageによりIgG subclassのswitchingがおこるかどうかを検討した。その結果では特定のIgG subclassが特定の病期に上昇することはなく,むしろIgG_1とIgG_4を主体として両者が病勢の低下とともに平行して低下してくる傾向があった(投稿準備中)。病初期に180kd抗原に対する抗体が出現し,その後230kd抗原に対する抗体が遅れて出現するかどうかを検討したが,検討した合成抗原においては必ずしも各抗原に対する抗体のswitchingは認められなかった。水疱形成期と非形成期のIgGがGa^<2+>の細胞内上昇をひき起こす能力において検討したが,必ずしも水疱形成期のみのIgGが細胞内Ca^<2+>上昇をひき起こすというわけではなかった。また口腔粘膜等の粘膜部のみに水疱が出現し,皮膚には水疱の出現しなかった症例があった。その抗原分子量を検索した結果,230kd抗原に対するIgA抗体が見出された(投稿準備中)。今後は抗原抗体反応がTransmembrane signalingを引き起こし,その後どのうな現象が起こるかを検討したい。またそれをひき起こす抗体がどのような抗体なのか,認識する抗原エピトープが異なるのか、IgG subclassによって異なるのかを検討してゆく予定である。
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