近代中国における日本人顧問史は、二つの相反する側面をもっている。第一に中国の日本人顧問は、そもそも日本の対中国政策の産物である。第二に日本人顧問は中国政府に招聘された技術者であり、中国近代化建設を協力する「助け人」でもある。このような複雑な日本人顧問史の全体像を描こうとするため、筆者が平成7年から今日までの間、主に次のような二つの仕事を行ってきた。 第一に「政治顧問」と「技術顧問」の視点から在華日本人顧問の実態・性格・及び役割を検討する事。第二に在華日本人顧問史を六つの時期にわけて分析し、職業別に整理してその違いと特徴を明らかにすることである。結論を先に言うと、在華日本人顧問史には、日清戦争以来の日中関係と同様に「友好」と「敵対」に異なる性格が併存していて、非常に多様的なものだと言わなければならない。従ってこれらの顧問を一概に「日本帝国主義の海外特殊部隊」と言い難く、また全ての顧問を中国近代化に貢献したと評価する事もできない。必要なのは、大量な資料を掌握する事と具体的な分析を行うことである。この意味で本研究の完成はこの分野における最初の専門書を提供できるだろう。 平成8年度内で、当初計画した目標を達成した。しかし、二回程、学会での報告及び英文雑誌への論文を準備するため、地方と中国への調査ができなくなった。多くの時間と資金を資料の整理と論文の作成に投入したからである。
|