研究概要 |
昆虫の気管系は胚発生において外胚葉が上皮性を保ったまま陥入,分枝,伸展,融合してつくられる管状上皮のネットワークである。この組織をモデルにして形態形成における細胞の移動,接着の役割を研究した結果、以下の成果を得た。 1 固定標本を用いた詳細な形態学的な解析により気管枝の融合において特殊な先端細胞がダイナミックな形態変化を遂げて上皮のスムースな融合を可能にしていることを示した。 2 先端細胞では転写因子Escargotが細胞間接着分子DE-カドヘリンの発現と、細胞の運動性を制御することで細胞の接着とその後の形態変化を制御していることを示した。 3 先端細胞の形態変化は気管の融合において先端細胞のapical-basalの極性が変化していることを示唆している。そこで微小態の分布パターンを調べたところ極性の変化とよい相関関係が見られた。その結果は先端細胞内部で1umenの形成位置と細胞の接着面とが共通の微小管構造を示標にして決定されているという可能性を示唆する。 4 蛍光タンパク質GFPを器官細胞で発現させ、気管の形態変化を生体で連続観察できる実験系を構築した。 5 細胞膜分子Notchは発生の様々な局面で細胞間のコミュニケーションと遺伝子発現制御とを結びつける重要なシグナル伝達系のレセプター分子で、気管で強く発現している。そこでNotchとそのリガンドであるDelta,Serrateの気管系における機能を調べたところNotchの時間的,細胞特異的な活性化が気管形成に必須であることを示す結果を得た。
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