研究分担者 |
水田 正志 日本電気(株), 基礎研究所, 主任研究員
坂 貴 大同特殊鋼(株), 新素材研究所, 主任研究員
田中 信夫 名古屋大学, 工学研究科, 助教授 (40126876)
堀中 博道 大阪府立大学, 工学部, 助教授 (60137239)
吉岡 正和 高エネルギー物理学研究所, 教授 (50107463)
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研究概要 |
GaAs型偏極電子源では電子の真空への引き出しに半導体表面でのバンドの曲りを導入し,電子親和性を(-)にした特殊な表面を用いている.この表面は汚染に対して極めて敏感で,極微量のH_2OやCO_2などの有害ガスの付着によって電子親和性が劣化して最悪の場合は(+)に戻ってしまい,そうなると電子は真空に出られなくなる.これが「フォトカソードの寿命問題」である.今年度はこの課題に取り組み克服できる見通しを得ることができた.有害ガスの削減にはカソード周辺の超高真空化と電極間の放電暗電流の抑制である. 我々はこの2項目を徹底的に追求すべく最新の技術を導入した試験装置を作製した.まず電極材料には非金属部分とポアが少ない特殊なステンレス鋼を選び,さらに表面研磨には複合電解研磨の後にウェットバフ仕上げを施した後に,表面不純物を超純水で洗い流し,最後にクラス1のクリーンルームで装置を組み立てる方法を採用した.この結果,偏極電子源に用いる条件である120KV(Gap=2cm)印加において全暗電流を1nA以下,また電極間放電暗電流は観察にかからぬほどに抑制できた.さらにGapを1mmに縮めて高電界を印加し,34MV/mで電極間放電暗電流90pAというデータを得た.これは諸文献にあるデータと比較して約3桁も小さい値であり,このときの表面はβ値(実際の表面電界/理想的な表面の電界を表わす)も約40と画期的に小さいことも確認でき,放電暗電流の抑制に見通しが立ったと言える. 上記方式により作製した電極を名大偏極電子銃に装着して試験した.そして100KVの印加,引き出し電流=数μA(DC)の条件下で,50時間以上の寿命を達成できた.これにより「フォトカソードの寿命問題」の解決にも見通しをつけることができた.
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