本研究の目的は、表面の広陵域の同時観察、表面の2点間の物性測定、表面平行方向の電場印加、表面ファブリーケーション等へのSTMの応用をめざし、双探針のSTM技術や研究手法の開発を行うことである。本年度は、双探針STM装置の心臓部である双探針ヘッドと4端子試料ホルダーの製作、次年度に製作する装置全体の設計、具体的実験課程を実行するための試料周りの設計、試料製作等の準備を行った。主要な結果を以下に示す。 1.双探針ヘッドの設計では、(1)2探針を独立に移動できること、(2)STMメインチェンバーをリ-クせずに探針を交換できること、の2点が実現できる機構となるように考慮した。これらは、STMの観察において重要であるだけでなく、探針を接触させた伝導測定、専用ティップによる原子付加実験など、応用実験を考えた場合、必要不可欠な機能であるからである。さらに、STM法の特徴である高い分解能での像観察が行えるように、機械的な固有振動数ができるだけ高く保たれるように配慮した。 2.4端子試料ホルダーについては、既存のホルダーの改造という形で、設計・製作を行うことができた。主要な改造点は4端子測定における電位差測定用の可動2電極を新たに設けたことである。将来の応用実験において重要な蒸着実験において、2電極が試料に対して蒸着ビームのシャド-イングが生じないように、(1)2電極を動かせること、(2)試料の向きと蒸着源ポートの配置、の2点を配慮した。次年度に行う、双探針STM本体の製作、上記の双探針ヘッドと4端子試料ホルダーを組み合わせた観察・測定を開始する準備は整ったと考えている。
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