研究概要 |
本研究の目的は、表面の広領域や観察、物性測定、電場印加、加工等へのSTMの応用をめざし、双探針のSTM技術の研究手法の開発を行うことである。2本の探針と2本のプローブを組み込んだ双探針STMを試作し、表面構造の観察、電気伝導の測定を行った。下記2,3の研究を平行して行った。 1.双探針STMの試作:2探針を個別に交換できる実用的なシステムとした。2探針は独立の探針ステージに保持され、個別のZ粗動・微動機構を有する。これは、頻繁に探針交換が必要となる表面加工のために不可欠である。Si(111)7x7表面の原子分解能像が得られた。探針をトンネル電流が流れる状態まで接近させれば、試料の電位を計測できることが分かった。実用上、重要な成果である。脱着可能な2本のプローブを用いると、試料中央領域の四端子電気計測ができる。基盤と絶縁された薄膜についても、プローブから試料バイアスを供給することで、表面のSTM観察が行える。外部電源を用いて探針を介して電場印加、通電も可能である。 2.基盤と絶縁されたシリコン薄膜の作製:シリコンを加熱すると、バルク部分での電気伝導が顕著となり、表面の構造変化に伴う電気伝導の変化を覆い隠す。そこでCaF_2薄膜により基盤から絶縁されたシリコン薄膜の成長を試みた。二段階成長法と室温での電子線照射を用いて、基盤と反平行方位のSi(111)結晶薄膜を作製できた。 3.吸着誘起ファセッティング:吸着に伴う微傾斜表面の形状変化をSi(001)-AuとSi(111)-Cu系について調べた。傾斜方向に垂直に走るステップバンドが形成された。高温領域では、方面原子がステップエッジで昇華したり、隣接しないテラス間でやりとりされる、non-local mess exchangeの運動学でステップバンドが成長していた。 以上の結果、双探針STM法が表面界面の新しい研究手法として実用に供される素地ができたと考えている。
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