研究概要 |
本研究は,表面改質技術を実用の機械要素である歯車に適用するための基盤研究として,平成7年度に開発した無潤滑大気圧下および10^<-5>Paオーダーの高真空中で運転可能な歯車試験機を用いて,表面改質を施した歯車の表面強さおよび動的性能評価を,歯面損傷との関連において明らかにするとともに,トライボメカニクスおよび材料工学的解析を,実際の機械要素である歯車に適用することを目的としている.平成9年度は本研究の最終年度であり,歯車試験機および二円筒試験機を用いて,表面改質されたローラおよび歯車の高真空中での試験を実施した.実験に用いた表面改質歯車およびローラのバルク材はステンレス鋼SUS440Cで,歯車には,無電解Ni-P合金めっき,Snめっき熱拡散処理および浸硫処理の表面改質を施した.歯車試験は,小歯車回転速度100rpmおよび200rpm,ピッチ点における最大ヘルツ応力519MPaおよび735MPaで行われ,トライボ性能に及ぼす回転速度と負荷面圧の影響を調べた.また,大小歯車駆動軸に取付けたトルク計により歯面の摩擦損失が評価され,小歯車(駆動歯車)歯元ひずみの測定結果から歯車の運転性能変化が考察された.本歯車試験結果は,滑り速度および負荷条件を歯車試験と対応された真空中二円筒試験結果と比較検討された.さらに加えて,表面改質を施したローラを用いた油潤滑の二円筒試験,ならびに大気中の常温および高温でのピンオンディスク試験により,それぞれの表面改質法における摩擦・摩耗特性を明らかにし,特殊環境下における統合的なトライボ性能評価ならびにトライボメカニクスを明らかにしている.
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