研究概要 |
特殊環境における歯車の歯面損傷と性能を評価,研究するため,高真空中で運転可能な歯車試験機を設計,開発し,これを用いて実験研究するとともに,通常環境や高温におけるトライボロジー特性に関しても研究を進めた。ファインセラミックスの高温摩擦・摩耗特性に関し、代表的なファインセラミックスであるSialon,Al_2O_3およびZrO_2の摩擦・摩耗特性を明らかにした.つぎに,新しく開発した耐摩耗性鋼の摩耗とスカッフィングに関し検討し,その耐スカッフィング能やしゅう動特性はSUJ2鋼より優れていること,耐摩耗性鋼に無電解Ni-P合金めっき処理した円筒では,高すべり率において耐スカッフィング能が高いこと,浸硫処理した円筒では,比較的初期の荷重段階で浸硫層が摩耗脱離するため,耐スカッフィング能向上はほとんど認められないことなどを明らかにした.また,表面改質ローラの転がり疲れとスカッフィングに関し,無電解Ni-P合金めっきローラのスカッフィング強さおよび転がり疲れ強さは未処理ローラの場合より大きく,スカッフィング強さの向上は高すべり率で顕著であることを見出した.さらに,高真空中における表面改質歯車とローラの摩擦・摩耗特性に関し,無電解Ni-P合金めっきの場合,ローラではSnめっき熱拡散処理に比べて摩耗率が小さいが,歯車では大きいこと,浸硫処理の場合,初期摩擦係数の低減効果が認められ,浸硫層の摩耗が小さい低面圧においてその効果が発揮され,Ni-Pと同等の伝達トルク損失の低減効果があること,Snめっき熱拡散処理の場合,摩耗粉の移着が生じる低面圧では,初期の摩擦係数が上昇したが改質層が一様に摩耗した後には摩擦の低減効果が得られ,また,伝達トルク損失および歯形の崩れは最も小さいことを示した.
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