研究概要 |
我々は超音速分子ビームエピタキシ-法(SSBE)を開発し、成長表面の化学反応などのプロセス制御が可能となり、高精度の成長速度制御や不純物取り込みの著しい低減に成功した。即ち,トリメチルガリウム(TMG)と水素分子との混合ガスを超音速ビームの原料に用いてTMG分子を4eVに加速することによって、TMG分子の表面分解を促進することに成功した。その結果、GaAsのSSBE成長において結晶成長に寄与する原料分子の利用効率が増加すると同時に、結晶膜への不純物取り込みが従来に比べて、二桁以上も低減されることを確認した。このように超音速ビームエピタキシ-法が表面化学反応の操作と高品質の膜成長に優れていることが明らかとなった。また、一パルス当たりに十分の一原子層の高い成長制御性を実現した。更にこの結果が高速RHEEDによるその場測定の結果と一致することから、これまでに開発した高速RHEEDがSSBE成長の観察と制御に有効であることも判明した。また,SSBE成長法と高速対応の観察装置との組み合わせが成長中のミリ秒領域における表面ダイナミックスの解明に有力であることも明らかとなった. 短波長発光素子用材料として、III族窒化物半導体が最近、非常に多くの人々の注目を集めている。我々は開発された短パルス超音速ビームエピタキシ-(SSBE法)とGSMBE法をうまく組み合わせ、GaN量子箱の試作を行った。それはGSMBE法を用い、本研究室の田中らの方法と同様にA1GaN表面上にSiを入れることにより、GaNドットを作成する。本研究では水素で希釈したメチルシランをSiソースとして使用し、短パルス超音速ビームでA1GaN表面に供給する。それは超音速ビームの高エネルギーがメチルシランの分解への促進効果を利用するものである。RHEEDおよびAFMで評価したところ、GaN量子箱はうまく形成したことがわかった。
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