研究概要 |
上記の研究者らは、かねてより海水流動の数値シュミレーションを精力的に行ってきた。司会、数値シュミレーションの有効性を真に検討するためには、現実のフィールド・データと比較検討し、シュミレーション結果の妥当性を検討することが、最も重要である。このような目的から、東京湾追浜沖に係留されている海洋空間利用のための実験供試浮体(通称メガフロート浮体,長さ300m,幅60m,深さ2m,喫水0.5m)まわりの海水の温度および塩分濃度の連続計測した(現在も計測は継続中)。計測は平成8年8月初旬から開始したので、19ヵ月に及び、貴重なデータが取得できた。海洋計測の結果、判明した事柄は以下の通りである。 (1)追浜沖に係留された長さ300程度の浮体では、浮体の存在が周囲の海水流動に与える影響は小さく、浮体の中央と浮体外の2点での水温や塩分濃度の変動は、浮体の存在する海域に卓越する潮汐等による基本流場に支配されている。 (2)夏季の成層期に、東京湾西岸(横須賀〜横浜)で表層近くの水温が約6℃、急降下し、かつ、塩分濃度が約3.5psu急上昇する現象が、計測期間中、数回認められた。これは西日本に台風が接近したときに東京湾では10m/sを超える南南西の風が連続的に吹送することによる沿岸湧昇の結果、東京湾内の下層にあった水温の低くかつ塩分濃度の高い海水が表層近くにもたらされた結果と予想した。 これらの事実を踏まえ、数値シュミレーションを行ったところ、浮体周辺の海水流動の基本的な特徴がシュミレーションで再現できること、沿岸湧昇により観測された水温および塩分の急変が定量的に説明できることなどを明らかにした。
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