研究概要 |
本年度は、熱雑音のみをコンパクトなCMOSアナログ回路で増幅し、これにより実用的なノイズ発生源を実現する研究を行った。これを1つ1つのニューロン回路に配置することにより、完全に無相関なノイズの影響下で確立動作する神経回路網を構成するのである。 抵抗で発生する熱雑音のスペクトラムは、4kTRΔfで与えられる自色雑音であるが、これを増幅の為アンプに入力すると帯域が時定数1/RCでカットされるため、そのパワーはkT/Cとなり、抵抗値Rにはよらなくなる。即ち、Rの選択に関しては全く自由ということになるが、有効な熱雑音増幅には、次の様な条件を考慮し、最適設計を行えばよいことことを明らかにした。 まず、ノイズ発生用のRを十分に大きくとることにより、ノイズの帯域1/RCを制限し、アンプの帯域で十分カバーされるようにし、得られる熱雑音をできるだけ損失なく増幅する。且つアンプの入力容量を十分に小さくし、kT/Cで与えられるノイズの有効電力を大きくしなければならない。我々はCMOSソースフォロワのアンチミラー効果を利用し、Cを実効的に十分小さくすることによりノイズの有効電力を大きくとり出せることを見出した。電圧増幅アンプとしては、電流源によりゲインを増強したカスコードアンプを用い、1MΩで発生する熱雑音を約78mVに増幅できることをシミュレーションにより確認した。また5MΩの抵抗では157mVの増幅ノイズが得られる。しかし、それぞれ帯域が85MHz、55MHzで制限されるため、完全無相関とはならないが,上記しゃ断周波数の約5倍の周期でサンプリングすれば、十分無相関な信号電圧列の得られることが分った。
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