アンチセンス・オリゴヌクレオチドを用いる代謝の中枢性制御法の開発

1995 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 07506004
• 研究種目: 試験研究(A)
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 高橋 迪雄 東京大学, 農学部, 教授 (30011943)
• 研究分担者: 堀越 大能 三共株式会社, 生物研究所, 室長 ; 松山 茂実 東京大学, 農学部, 助手 (80219526) ; 甲斐 知恵子 東京大学, 農学部, 助教授 (10167330) ; 森 祐司 東京大学, 農学部, 助教授 (40157871) ; 西原 真杉 東京大学, 農学部, 助教授 (90145673)
• キーワード: アンチセンス・オリゴヌクレオチド / 視床下部 / 代謝 / 摂食行動 / 肥満 / 走行運動 / γ-アミノ酪酸 / グルタミン酸脱炭酸酵素

研究概要

本年度は,主としてGABA合成酵素(GAD)遺伝子に対するアンチセンスDNAの効果の解析を行った.GADにはGAD65とGAD67のアイソザイムがあり,別個の遺伝子によりコードされている.それぞれの遺伝子の開始コドンを含む15塩基のアンチセンスDNAを作成し,ラットの視床下部腹内側核に吸水ポリマー法により投与したところ,摂食量,体重が有意に仰制され,一方行動量が増加することが明かとなった.また,GAD67アンチセンスDNAの効果の方がGAD65アンチセンスDNAの効果よりもどの指標に対しても大きく,また持続的であった.補酵素との結合やニューロン内の分布などの違いから,生体の置かれた状況に応じた一過的,あるいは動的なGAD活性の変化はGAD65の活性変化に依存していると考えられているが,GAD67の活性調節機構やその意義は明らかではない.摂食量,体重,行動の日内パターンなどの指標に対してGAD67アンチセンスDNAの方がより大きな効果を発揮したという結果は,GAD67はより持続的なGAD活性の制御に関与しており,GABAの日内変動や,生体の恒常性の維持に関わるGABAの産生を司どっているのがGAD67であるということを示唆している.VMHは内部環境の変化を持続的にモニターし,GAD67遺伝子の発現を介して生体内の物質とエネルギーの長期的な平衡を制御していることが考えられた.

研究成果

• [文献書誌] Hirasawa M 他: "The rostral ventrolateral medulla mediates suppression of the circulatory system by the ventromedial nucleus of the hypothalamus" Brain Research. (印刷中). (1996)
• [文献書誌] Nishimura F 他: "Changes in chemical sensitivity of rat ventromedial hypothalamic neurons by food deprivation" Physiology & Behavior. (印刷中). (1996)
• [文献書誌] Hirasawa M 他: "Neural activity in the VMH associated with suppression of the circulatory system in rats" Physiology & Behavior. (印刷中). (1996)
• [文献書誌] Nishimura F 他: "Excitability of neurons in the ventromedial nucleus in rat hypothalamic slices: Modulation by amino acids at cerebrospinal fluid levels" Brain Research. 691. 217-222 (1995)
• [文献書誌] Suzuki M 他: "Hypothalamic gonadotropin-releasing hormone gene expression during rat estrous cycle" Endocrine Journal. 42. 789-796 (1995)
• [文献書誌] Yamanouchi K 他: "Molecular cloning of cDNA for inhibin α-subunit from equine ovary" The Journal of Veterinary Medical Science. 57. 905-909 (1995)