研究概要 |
本年度はモデル小動物を用いた基礎的検討を行うとともに臨床応用を一部試みた.心筋症自然発症ハムスターであるBIO14.6において経胸壁アプローチにて非侵襲的に抽出した超音波組織性状指標の心周期依存性変化は,組織線維化の程度を反映して低値であったが,アンギオテンシン変換酵素阻害薬によりいずれも改善することにより,分子レベル心筋動態に加え心筋線維化の程度を反映することが示された.臨床的に拡張型心筋症を対象として行った検討では,我々が基準化した超音波組織性状指標は,侵襲的に心筋生検により得られた心筋組織線維化の程度と良い相関を示すことより,心筋組織性状非侵襲評価のための良い指標となり得ることが明らかとなった.さらに,陳旧性心筋梗塞例を対象として行った検討では,本指標は健常例に比し高値となるが,RI法により得られる心筋viabilityの指標を非侵襲評価し得る可能性が示された.尚,動物実験による基礎的検討では,本指標はロ-ディングコンディションの状況の影響を受けにくい指標である一方,その心周期依存性変化は心筋収縮動態を反映することを明らかとしている.しかし,急性心筋梗塞例における検討ではこの心周期依存性変化は再灌流前には消失しているものの,再灌流後は収縮性が低下しているにもかかわらずこの心周期依存性変化が回復する.さらに本手法と心筋コントラスト法との融合を試みたところ,従来の心エコー法に比し各種心疾患の心筋血流動態の定量的評価を行い得る可能性が示唆されており,今後の展開が期待される.
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