研究課題/領域番号 |
07507004
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研究種目 |
試験研究(A)
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
山下 博 産業医科大学, 医学部, 教授 (00030841)
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研究分担者 |
稲永 清敏 九州歯科大学, 歯学部, 教授 (90131903)
山下 優毅 広島大学, 医学部, 教授 (00028680)
河田 光博 京都府立医科大学, 医学部, 教授 (60112512)
河南 洋 宮崎医科大学, 医学部, 教授 (00049058)
堀 哲郎 九州大学, 医学部, 教授 (00022814)
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キーワード | 遺伝性多飲(STR / N)マウス / バゾプレッシン / c-fos mRNA / グルココルチコイド / バゾプレッシン遺伝子 / 脳スライス標本 / パッチクランプ法 / 細胞内Ca^<2+>濃度の画像解析 |
研究概要 |
平成7年度は遺伝性多飲(STR/N)マウスの形態的ならびに機能的解析を中心に、コントロール(ICR)マウスと比較することによりその異常性の原因を探ることに主眼をおいた以下の成果を得た。 1.生理学的、行動学的、心理学的検索 バゾプレッシンアンタゴニストとバゾプレッシン抗血清の脳室内投与によりSTR/Nにおいて飲水量がICRのそれとほぼ同程度まで減少することを明らかにした。さらに上喉頭神経に報告されている水に特異的に応答する線維を中心にSTR/Nにおける水応答について検索を進めている。 ラットのc-fos mRNAの開始コドンを含む15塩基に対するS-オリゴ化したアンチセンスオリゴDNAを作製した。FTIC標識したアンチセンスオリゴDNAをラットの視床下部視索前野に微量(0.5nmoles/0.5μl)注入し、3、6および12時間後に検討したところ、6時間後には注入側のみの視索前野ニューロンに取り込みが観察された。 2.神経解剖学的検索 グルココルチコイドとミネラルコルチコイド受容体のcDNAをホルモン結合ドメイン、DNA結合ドメイン、全長の異なる組み合わせのDNAフラグメントに分け、組換えプラスミドベクターをトランスフォームさせ、融合蛋白を可溶化、精製した。目的とする蛋白を精製したのち、特異抗体の作製に成功した。これらの抗体を、用いて免疫組織化学とin situ hybrisization法を用いて、下垂体後葉ホルモンおよびグルココルチコイド、ミネラルコルチコイド受容体の脳内分布について検索した。 3.免疫学的検索 .STR/Nの免疫異常の機序を明らかにするために胸腺細胞と脾細胞をin vitroで培養し、マイト-ゲンに対する反応性を解析したところ、ICRに比べてコンカナバリンA刺激によるDNA合成反応が上昇していた。さらに血清中の総免疫グロブリン量も上昇しており、STR/Nでは免疫機能が亢進していることが示唆された。 4.分子生物学的検索 STR/Nのバゾプレッシン遺伝子の解析を行い、正常マウスと比較してexon2の2910番目のCがTに置換していることを明らかにした。しかしながらこの変異はアミノ酸の配列に変化をきたさないものであった。このことによりSTR/Nの多尿はバゾプレッシン遺伝子の異常によるものではなく、その発現調節機構の障害、バゾプレッシンの腎における感受性の低下などが起こっている可能性が示唆された。 5.電気生理学的検索 ICRを用いて脳スライス標本を作製し、視索上核、室傍核、第三脳室前壁側部、脳弓下器官よりブラインドパッチクランプ法を用いてシナプス電流を記録し、ニューロンに対する入力様式を調べた。また、コントロール実験としてラット視床下部スライス標本から神経細胞を単離し、パッチクランプ法ならびに細胞内Ca^<2+>濃度の画像解析を行う系を確立し、これらの手法により神経ペプチド、サイトカインなどに対する反応性を検討した。
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