研究課題
新生児における先天性横隔膜ヘルニアは肺低形成のため極めて予後不良であり、胎児治療が望まれている。子宮内胎児に対する横隔膜修復手術が報告されているが、侵襲が大きく成績は不良である。一方、横隔膜ヘルニア羊胎仔において気管を閉塞することにより肺の発達が促進されることが明らかにされ、ヒト胎仔への応用が考えられる。本研究の目的は、横隔膜ヘルニア胎児の気管を低侵襲な内視鏡手術により閉塞する方法を開発することである。本年度は昨年度試作した極細内視鏡・極小バルーンカテーテルを用いて、羊胎仔気管内への内視鏡的なバルンカテーテル挿入を試みた。妊娠120-130日の妊娠羊に対し、ラボナ-ル静注後気管内挿管し、ハロセン2-3%の吸入麻酔下で以下の実験を行った。母獣の腹壁を切開し子宮壁を露出せしめ、子宮壁に小切開を加え、内視鏡の先端を子宮内へ挿入した。内視鏡による子宮内観察の視野を良くするため、子宮内へラクテック液を注入した。当初、内視鏡を2本用い、1本は地方の内視鏡先端を胎仔の鼻孔に誘導するために使用したが困難であったため、胎仔の頭部を子宮壁を介して術者の手掌にで把持し、鼻孔が子宮壁切開創直下に来るように固定してから、内視鏡先端を挿入した。生理的食塩水を持続的に注入することにより内視鏡による観察は良好となり、鼻腔内から喉頭に至るまでは内視鏡先端の挿入は容易であった。喉頭蓋を超えて気管内に内視鏡先端を挿入することは、急角度となるため困難であり、内視鏡の操作性の改善が必要であると思われた。胎仔の頸部を伸展させることにより挿入は可能であり、内視鏡先端挿入後は内視鏡先端内部に装着したバルンカテーテルの留置は容易であった。