研究概要 |
本年度の主要な成果は、1)XANESピークを利用した培養細胞のDNAイメージング、2)細胞内元素分布導出のプログラムの開発と元素分布画像を求めたこと、の2点である。具体的には以下の通りである。 1.XANESピークを利用した培養細胞のDNAイメージング 昨年度までに得られたリンのK吸収端および窒素のK吸収端におけるDNA特有のXANES共鳴ピークを利用して、分裂期におけるヒトHeLa細胞のDNAイメージングを試みた。共鳴ピーク波長およびそれをわずかにはずした波長にて画像を取得しratio演算を施しDNA画像を求めた。コントラストが低いため微小な濃淡を可視化するための疑似カラープログラムの開発も並行して行った。リンK吸収端では核領域にdenseな構造が観察され、染色体構造が示唆された。一方窒素K吸収端では低倍率の予備的な結果ではあるが、ヒストンとは異なった分布が細胞内特定領域に見られた。 2.細胞内元素分布のプログラム開発と元素分布イメージング 細胞内にはC,N,Oの主要元素からFe,Caなどの微量元素まで存在量に大きな幅がある。元素分布は吸収端両端波長での画像の比から求める方法が一般的であるが、微量元素の導出においては豊富に存在する元素の吸収の影響を除かなければならない。今年度は最小二乗法を用いて求める元素数以上の波長数で取得した画像から元素分布を求めるプログラムを開発し、微量元素がより精度よく求められることを示した。HeLa細胞内C,N,O,Ca分布を求め、吸収端での比画像と比較した。いずれの元素も核領域に多く分布する結果が得られ、とくに微量元素であるCaは比画像にくらべて画像の改善が著しく本方法の有効性が明らかとなった。
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