本年度の主要な研究計画は、絵巻物資料のデータベース作製ということであり、比較研究が可能な考古学資料について随時集成をすすめていこうとするものであった。この年度の研究実績の概要についてしるすことにする。 まず古代末から中世にかけて成立した絵巻物の製作年代を明確にした。その結果、絵巻物は製作年代を基準に1〜6期にわけられることがあきらかになった。すなわち1期は12世紀後半、2期は13世紀前半、3期は13世紀後半、4期は14世紀前半、5期は14世紀後半、6期は15世紀後半である。 つぎに絵巻物名、場面(巻名・段名)、物質の特徴(器種・大きさ・材質・機能・用途)などの項目について、パソコンを利用してデータベースを入力した。また絵巻物をスキャナーで画像としてもとりこみ、データベース化した。とりあつかう絵巻物の素材に関しては、本来原本を実際に検討するのが最良なのであろうが、本研究では刊行されている絵巻物の全集に依存し、それを検討の対象とした。両者を比較するうえで対象とするのは、絵巻物にえがかれていてかつ考古学資料として遺存する物質にかぎった。具体的には、陶磁器、漆器、曲物、建物などである。 考古学資料については、長期にわたって出張が可能な夏期休暇などを利用し、随時資料収集をおこなった。北は北海道から南は沖縄まで、比較研究をすすめていくうえで重要な中世遺跡の踏査と出土遺物を中心に、資料調査をおこなった。
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