本年度の主要な研究計画は、考古学資料のデータベース作製ということであり、前年度におこなった絵巻物資料データベースと比較研究が可能になる状態にしていこうとするものであった。 しかし、絵巻物資料のデータベース化に、計画期間を上回る期間を要し、同時に来年度行う予定であった情報管理システムについても検討していくことになった。これは、絵巻物資料が非常に豊富だったことと、最終的にできあがったデータベースをいかすことのできる情報管理システムを開発するためには、データベースを作製する段階から、準備・検討せねばならないことがあったためである。この年度の研究実績の概念についてしるすことにする。 まず、昨年度に入力した、絵巻物資料の文字データと画像データという2種類の独立したデータを、一件ごとにひとつのカードファイル上におさめ、通し番号をふった。これにより、文字情報と画像がひとつの画面上にあらわれ、検索も可能なデータベースとなった。漆器、土器、曲物、鉄器などのカードファイルをそれぞれ作製し、最後にそれらを結合させて、絵巻物資料データベースを完成した。 つぎに、情報処理システムの開発のため、できあがった絵巻物資料データベースを用いて、一般公開を想定しての試験的な運用をした。具体的には、二台のパソコンを用い、一台で情報の発信元となるサーバーをたちあげ、データベースをリンクさせて表示し、もう一台でそれが外部からどのようにみることができるかを試みたのである。情報の提供の仕方の適宜や、そこに表示されている情報がきちんと管理されているかをチェックした。同時に公開する情報そのものについて、どこまでを自由に公開・利用(場合によっては複製)してもらうべきか、どこまでを管理するべきか検討した。
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