研究概要 |
本研究の目的は,研究代表者が開発した心理学的ゲーム論に基盤をおく社会動機検出のための「IF-THEN法」とよぶ一般対人行動における反応傾向を9種(単利・自虐・献身・加害・共栄・共倒・優越・卑下・平等)の社会動機成分に分解して表現できる心理検査技法に対して実社会における具体的実用性を具備させるために,一般企業などで直接的に利用可能なように,対人関係としていくつかの特定の具体的状況を設定して対人行動で解発される行動を規定するいわば潜在的社会動機に関する動機成分分布を理論的乃至分析技法的問題については基本的には「IF-THEN法」に準拠したままで個人的に検出できる技法に改変した心理検査を試験的に構成することにある。ここで,主眼として設定した具体的事態は,相手が自己の所属する組織の上司(同性・異性)の場合,同僚(同性・異性)の場合,下僚(同性・異性)の場合,および,競争的組織の人物である場合,全く無関係な人物である場合の8種の事態である。8種に限定したのは,実用性という点で検査内容が膨大になるのを避ける意味もあるが,本来の「IF-THEN法」が信頼性測定のために具備している反復部分を利用することと4種の反応用紙を利用することで,本来の「IF-THEN法」の分析形態の本質をそのまま失わないままで検査構成を単純化できると考えたからである。試験的実施のために行なった実験では被験者は40名の学部学生を対象にしたが,データの分析過程で理論的・技法的にとくに問題がないことが確認され,したがって,実用化は可能であろうという結論に達したが,得られた資料だけでは実社会を対象としたデータとしてはまだ十分とはいえないので,今後も標準化のためにはさらなるデータ収集が必要であることが指摘され、最終的教示版・反応用紙その他の作成も今後すべき作業として残されたが,これらはたんに時間だけの問題であるので,本研究の所期の目的は十分に達せられたものと結論された。
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