広視野赤外線カメラの開発要素としてあげていた3点それぞれについて試験をほぼ完了した。まず冷却系は、前年度の設計にもとづいて、大きな開口部をもつ冷却容器(クライオスタット)を製作した。冷凍機を用いて検出器部分を30K程度、光学系全体を80K以下に保つことができる。特に熱の伝搬に関してさまざまな試験を繰り返し、インジウムや鍋のワイヤを使って熱伝導を良くし、冷凍機の能力をうまく引き出すようにした。フィルターの交換や焦点合わせの部分にはステッピングモーターを油ぬきして低温部分に組み込み、低温での駆動試験を行なって問題なく動くようにした。第2のカメラ光学系については、金属鏡のテストをまず直径数cmの軸外し放物面鏡、次に直径10cmの放者面鏡と15cmの球面鏡を製作して行ない、いずれも十分に高精度な鏡面ができことを確認した。前年度に決定していた主鏡と副鏡の光学設計(リッチ・クレチエン方式)にもとづいて、それぞれを製作した。2枚からなる補正レンズ系も完成した。第3の低ノイズ電子回路については試作品で十分に低いノイズを達成し、すでに製作を始めた。赤外線アレイの駆動回路のうち、素子によらない部分は国立天文台開発のメシア3を使用している。 これからの計画としては、以上の3要素を統合して実際にシステムとして完成させ、光学系の検査・組立の後、名古屋大学キャンパス内の赤道儀に搭載して観測を開始する。
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