研究課題/領域番号 |
07554006
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 展開研究 |
研究分野 |
素粒子・核・宇宙線
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
政池 明 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (40022587)
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研究分担者 |
清水 裕彦 理化学研究所, 研究員 (50249900)
舟橋 春彦 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (00283581)
延与 秀人 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (30213606)
寺嶋 正秀 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (00188674)
広田 襄 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (90093301)
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研究期間 (年度) |
1995 – 1997
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キーワード | 高温陽子偏極 / 偏極陽子標的 / レーザーによる陽子偏極 / 固体効果 / ペンタセン / ナフタリン / パラタフェニール |
研究概要 |
陽子の偏極標的としてはこれまで極低温(1〜0.05k)、高磁場(2.5〜5T)中でマイクロ波を有機物質に照射することにより、その物質中の水素核を動的に偏極する方法が用いられて来た。しかしこの方法は極低温を用いているため大強度の荷電粒子、特に低エネルギー粒子の場合、電離損失による加熱のために散乱実験に用いることは困難とされている。またこの方法では大掛かりな低温装置と磁石を必要とする。 これらの問題を克服するためにこの研究ではSchimidtらによって提唱された「芳香族の有機物質にレーザーを照射して電子を三重項状態に励起し、そこにマイクロ波を加えて電子スピン整列を陽子に移行させる方法」によって高温で陽子の高偏極を得る方法をはじめて開発した。実際にこの研究で用いられた結晶は少量のペンタセンをドープしたナフタリンとパラタフェニールの単結晶である。ペンタセン分子の基底状態は一重項であるが、レーザービームの照射によって三重項の状態が励起される。この状態では電子スピンが整列している。これは約20マイクロ秒の寿命で再び元の基底状態に戻るが、その三重項の寿命の間にマイクロ波を照射することにより、この電子の整列を陽子スピンに動的に移行させる。このプロセスを繰り返すことによって陽子の高偏極が得られる。この研究の目標はレーザーによる陽子偏極に最適の物質を見出し、陽子の高偏極を達成して中性子偏極フィルターや低エネルギー粒子の核子による散乱のための偏極標的の実用化を行うことであった。この研究期間にナフタリン結晶の場合Schimidtらによって得られた約0.1%の偏極度(常温)の300倍以上にあたる≧30%の陽子偏極を液体窒素の温度で得ることが出来たのは大きな成果であると考えている。またパラタフェニールの場合ペンタセン濃度を上げることが出来るので高偏極が容易に得られることも明らかになった。 更にこの偏極陽子を低速中性子ビームを偏極するためのフィルターとして用い得ることが実証された意義も大きい。
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