研究課題
本研究は、従来よりも小型・軽量・可搬性に優れ、移動観測や遠隔地における無人観測を可能とする車載型の境界層レーダーシステムを開発することを目的としている。本年度は主に以下の研究を行った。・送受信周波数3.05GHz、送信出力500W、帯域10MHz、デューティ比20%以下の性能を持つSバンド小型送受信機を設計・製作した。・本研究で開発するレーダーは従来よりも高い周波数を用い、アクティブ・フェーズド・アレイ・アンテナを持つ車載型のシステムである。従来よりも小開口のアンテナと低出力の送信機を用いて微弱な晴天大気エコーを観測するため、距離分解能を犠牲にすることなく信号対雑音比を向上させることのできるパルス圧縮技術について検討し、本レーダーシステムに適用可能な方法を開発した。・データ収集装置を設計・製作した。データ収集装置は主にA/D変換器とDSPから構成され、受信信号をディジタルデータに変換し、パルス圧縮の復合処理やコヒーレント積分処理などを行う。・ワークステーションを用いて、レーダー制御や実時間データ処理を行うためのソフトウェアを開発した。データ処理と並行して、観測結果をグラフィック表示することも可能である。来年度初めに、上記装置と昨年度設計・製作したフェーズド・アレイ方式のSバンド小型平面アンテナとを組合せ、信楽MU観測所において試験観測を実施する計画である。