研究課題
本研究は、従来よりも小型・軽量・可搬性に優れ、移動観測や遠隔地における無人観測を可能とする車載型の境界層レーダーシステムを開発することを目的としている。本年度は主に以下の研究を行った。・データ収集装置を設計・製作し、ソフトウェアを開発した。データ収集装置は主にA/D変換器とDSPから構成され、受信信号をディジタルデータに変換し、パルス圧縮の復号処理やコヒーレント積分処理などを行う。非常に大量の計算が必要な復号処理をリアルタイムに実現するため、DSPチップを8個用いて、それらを並列分散処理させている。・ワークステーションを用いて、レーダー制御や実時間データ処理を行うためのソフトウェアを開発した。本ワークステーションにより自動観測が可能であり、さらに観測中に観測データをグラフィック表示することも可能である。また、観測の開始・停止等の操作はユーザーインターフェースに優れたものとなっている。・データ収集装置・ワークステーションを前年度までに開発済のアンテナ・送受信機と組合せ、信楽MU観測所において試験観測を実施した。MUレーダーとの同時観測結果から、Sバンド境界層レーダーが正しく風速を測定できていることを確認した。・パルス圧縮によりS/N比が向上することを観測データから検証した。また、今回国内のレーダーとしては初めて採用した特殊なパルス符号系列を用いたパルス圧縮により、従来のパルス符号系列を用いては不可能であった低高度からのデータ取得が可能であることを実際の観測データから検証した。