研究課題
基盤研究(A)
本研究では、従来よりも小型・軽量・可搬性に優れ、移動観測や遠隔地における無人観測を可能とする車載型の境界層レーダーシステムを開発した。本レーダーは、アンテナ装置、送受信装置、データ収集装置、データ処理装置から構成される。・アンテナ装置はフェーズド・アレイ方式の平面アンテナから成り、直径1m、放射利得は約26dBiで、可搬性に優れたものである。・送受信装置は送信周波数3.05GHz、送信出力500W、帯域10MHz、デューティ比20%以下の性能を持つ。・データ収集装置は主にA/D変換器とDSPから構成され、受信信号をディジタルデータに変換し、パルス圧縮の復号処理やコヒーレント積分処理などを行う。非常に大量の計算が必要な復号処理をリアルタイムに実現するため、DSPチップを8個用いて、それらを並列分散処理させている。・データ処理装置はワークステーションから成り、レーダー制御や実時間データ処理を行う。本ワークステーションにより自動観測が可能であり、さらに観測中に観測データをグラフィック表示することも可能である。また、観測の開始・停止等の操作はユーザーインターフェースに優れたものとなっている。1998年1月に信楽MU観測所において試験観測を実施した。MUレーダーとの同時観測結果から、Sバンド境界層レーダーが正しく風速を測定できていることを確認した。また、パルス圧縮によりS/N比が向上することを観測データから検証した。さらに、今回国内のレーダーとしては初めて採用した特殊なパルス符号系列を用いたパルス圧縮により、従来のパルス符号系列を用いては不可能であった低高度からのデータ取得が可能であることを実際の観測データから検証した。