研究概要 |
細胞内の情報伝達にイノシトールリン脂質の代謝が深く関わっている。これらの生理機能を分子レベルで解明することを目標に、益々活発になっている医学・生物の分野の研究と呼応して、天然及びその類縁イノシトール誘導体のデザインと化学合成に加え、いかに効率良く、かつ大量に目的物を得るかということを、本研究課題とした。 その結果、つぎのような成果を得た。 1.酵素反応の利用により、光学活性イノシトール誘導体が効率良く得られ、さまざまな有用物質の合成中間体として利用できることを明らかにした。本結果を成書にまとめた。 2.安定化したビタミンCの誘導体を得るため、イノシトール誘導体などとの各種ハイブリッドを合成し、目的に適った化合物を得るに至った。その製造レベルでの生産も可能となった。 3.飽和脂肪酸を有するホスファチジルイノシトール3,4,5-三リン酸(PIP_3)の合成法を確立できた。大量合成にも適用でき得ることが分かった。この合成品はPKCを活性化することが分かった。 4.飽和型ホスファチジルイノシトール4,5-ニリン酸(PIP_2)の合成を完成した。 5.これまで、報告してきた効率的新合成手法を活用して、ホスファチジルイノシトールジマンノシド(PIM_2)を短工程で位置選択的に合成することができた。このものの生物活性について現在検討を行っている。 6.新しい水酸基の保護基とリン酸の保護基を開発し、これにより、不飽和型PIP_2、PIP_3の合成法が確立された。
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