研究概要 |
1.窒化ケイ素製の基板およびAFM探針に対し,オゾンにより表面の洗浄・酸化を行った後,アルカリ溶液と酸溶液に交互に浸穏するいう比較的穏和な前処理を行うことにより,窒化ケイ素上に2カ月以上安定なSAMsを作製できることを見いだした. 2.窒化ケイ素製のAFM探針に対するSAMsの修飾状態を直接評価する方法について検討した.すなわち,10-undecenyl trichlorosilane(以後UTS)を様々な反応時間で修飾した窒化ケイ素製の基板およびAFM探針に対し,それぞれ接触角測定,へき開したマイカとの吸着力の測定を行った.その結果,このような吸着力と接触角の測定の結果に非常によい対応がみられた.このことから,既知の試料との間で行った吸着力測定の結果と接触角測定の結果を比較することによって,AFM探針先端の修飾状態を直接調べることができることが示された. 3.末端にビニル基を有するUTSのSAMsを修飾したAFM探針において,さらにそのビニル基をヒドロホウ素化反応によって水酸基に変換した場合の吸着力に対する効果について検討した.その結果,ビニル基を末端に持つSAMsで修飾された探針では,主に疎水性相互作用に由来すると考えられる最も強い相互・作用力が観測されたが,水酸基を末端に持つSAMsで修飾された探針では,疎水性表面との間で強い相互作用力は観測されなかった.この結果は,SAMsの官能基を異なる官能基,さらには機能を有する分子をAFM探針に変換することで,物質を特異的に識別できる等の様々な機能を有するAFM探針を作製できる可能性を示していると考えられる.従って次年度は,このことについて研究を展開する予定である.
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