研究概要 |
現有の日立M-1000型質量分析計の改修を行った。改造部品が全部特注品なので改修までに時間を要したので,改修終了前に従来のHPLC用のエレクトロスプレー(ESI)インターフェースに自作のノズルをつけてキャピラリー電気泳動(CE)-質量分析法(MS)直接結合法の研究を行った。質量分析計改修後は新しく設置した大気圧化学イオン化(APCI)インターフェースを用いた実験を行った。 ESIインターフェースを用いて,構造の類似したペプチドの分離検出を行った。分離には,以前に研究代表者らが開発した非イオン性界面活性剤を泳動液に添加する方法を採用した。試料としてニューロテンシン類似体3種の分離検出を行った。緩衝液成分に揮発性を持たせるために,リン酸塩緩衝液の代わりにギ酸塩緩衝液を用いたが,塩の種類を変えると分離も変化したので,分離条件の再検討が必要であった。非イオン性界面活性剤としてモノデカン酸スクロールを100mM添加した。界面活性剤がESIインターフェースの中に入らないように,界面活性剤をキャピラリーの一部のみに充填する,部分充填法を採用した。ESIのシース液には水/メタノール/ギ酸(50:50:1)を用い,シース流速は毎分1μlとした。この条件で11番目のアミノ酸がトリプトファン,チロシン,フェニルアラニンであるニューロテンシン類似体3種を完全に分離し,MSスペクトルも同時に測定できた。質量分析計の測定範囲が分子量1000以下なので,2価および3価イオンを検出した。後者の方が強度が高かった。 APCIを用いる実験データはまだ少ないが,ミセル動電クロマトグラフィー(MEKC)で硫酸ドデシルナトリウム(SDS)を用いても種々の低分子量試料の検出が可能であることがわかった。ESIではSDSを用いると検出感度が低下して実用にならなかったが,APCIではSDSの影響は低く実用になると期待できる。
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