研究概要 |
昨年度は,現有の日立M-1000型質量分析計に,エレクトロスプレーイオン化(ESI)インターフェースを用いて,キャピラリー電気泳動(CE)-質量分析法(MS)直接結合法の研究を行った。今年度は,M-1000型質量分析計に大気圧化学イオン化(APCI)インターフェースが設置できたので,CE-APCI-MSについて研究を行った。APCIインターフェースはエレクトロスプレーによる噴霧とコロナ放電によるイオン化とを組み合わせたものである。すべての部品が特注品であったので,改修に時間を要した。APCIを用いた実験データはまだ少ないので,まず設置したAPCI-MSの操作条件を最適化するために,種々のパラメータがMS検出感度に及ぼす効果を詳細に検討した。 1.カフェイン溶液を電気浸透流により連続的にAPCIインターフェースに供給し,得られる試料の分子イオン強度をモニターし,種々の操作パラメータが検出感度に及ぼす効果を検討した。シース液にはメタノールを用い,シース液流量のカフェインの検出感度に及ぼす効果を検討した結果,3-70μl/minの範囲で,影響は見られなかった。カフェイン溶液に硫酸ドデシルナトリウム(SDS)を加えても0-70mMの範囲で感度への影響は見られなかった。しかし,ドリフト電圧及び脱溶媒室温度の影響は大きく,ドリフト電圧は40-50V,脱溶媒室温度は300℃がよい感度を示した。現在,実際の電気泳動条件での実験を継続中である。 2.胆汁酸塩をミセル形成剤に用いて,ミセル動電クロマトグラフィーを行い,APCI-MSをその検出器として用いた。コール酸ナトリウム,デオキシコール酸ナトリウム,タウロコール酸ナトリウムを50mMで用いても,SDSを用いた場合と同様に試料のMSスペクトル検出に妨害はなく,また検出感度の著しい低下も見られなかった。
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