この3年に及ぶ本研究の目的は、これまで申請者らが中心となって行ってきた遠赤外領域での放射光利用での実績を基に、これまでその利用が普及してこなかった赤外領域での有効利用を図ろうというものである。具体的には赤外ー遠赤外域における放射光の高輝度性を利用する実験(例えば圧力発生器としてダイヤモンドアンビルセルを用いた高圧下遠赤外分光実験がこれに相当)の遂行、放射光の短パルス性を利用するこることで従来の時間応答スケールを千分の一以下に縮めるという新境地を開くことが可能な時間分解赤外分光実験の確立、等である。 本年度は分子科学研究所(岡崎市)の放射光施設UVSORにおいて我々のグループが開発した時間分解赤外分光装置に高速の赤外検出器を組み込んで、パルス光源としてのUVSORの時間応答スペクトルの観測を試みた。シングルバンチ運転時のUVSORはパルス幅160ナノ(10-9)秒、パルス幅約0.2ナノ秒のパルス光源である。本研究において、UVSORがナノ秒領域の優れた赤外パルス光源であることが立証され、その成果を日本物理学会、国際会議(SR197(姫路))で発表した。
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