これまでの放射光の利用は波長の短いX線・軟X線領域を中心に行われ、赤外域での利用は極小数のグループに限られてきた。本研究の目的は、これまで申請者らが中心となって行ってきた遠赤外領域での放射光利用での実績を基に、放射光の更なる利用を図るため、放射光ならではの研究課題を遂行することにある。具体的には赤外-遠赤外域における放射光の高輝度性を利用することで容易に実行できるダイヤモンドアンビルセルを用いた高圧下遠赤外分光実験、放射光の短パルス性を利用するこることで従来の時間応答スケールを千分の一以下に縮めるという新境地を開くことが可能な時間分解赤外分光実験、表面赤外分光実験への利用等である。 これらの目的の下に本研究では分子科学研究所(岡崎市)の放射光施設UVSORにおいて全ての実験を行い、10Paを越す高圧領域での遠赤外分光実験が容易に行えることの実証・我々のグループが開発した時間分解赤外分光装置に高速の赤外検出器を組み込んで、赤外パルス光源としてのUVSORの時間応答スペクトルの観測を試み、放射光が優れた赤外パルス光源であることを実証するなどの成果を挙げてきた。この様な成果が大きなきっかけとなって今や赤外放射光の利用は世界数カ所の放射光施設で行われつつある。
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