研究概要 |
本研究は2年計画で当初の目的を達成する予定である。本年度はその1年目であり、当初の研究計画は以下の通りである。 1)配向膜作製装置の導入と立ち上げ 当初の予定通り、日本真空技術(株)製のヘリコンスパッタ装置を導入した。予算の関係上、カソ=ドは3基設置可能なところを,2基にして導入した。そのうち1基に真空漏れを発見し、スパッタ装置の立ち上がりが、3ケ月ほど遅れた。しかし現在ではほぼ、仕様通りの性能を示している。 2)単体金属および合金の配向性膜の製作 現在は、装置の慣らし運転および、運転技術の研修を兼ねて、単体金属膜を作製している。 銅、クロムおよび鉄の膜をシリコン単結晶の(1,1,1)面上に作製した。予想通りエピタキシャル成長と比べて、1桁程度の高速で膜作製が出来る。 3)配向性膜の評価 作製した、金属膜を東北大学理学部に設置されている4軸型単結晶x線回折装置を用いて配向性を評価した。その結果、銅に関しては、配向性はほとんど認められなかった。しかしクロムの場合には、高い配向性が認められた。体心立方構造の(1,1,0)面が、約0.4度の角度以内に配向していることがx線回折で明かになった。この角度分散は、現在X線や中性子回折実験に用いられているパイロリティックグラファイトに匹敵するものであり、今後膜作製条件の吟味により、より配向性の高い膜が作製できる可能性がある。結果は体心立方構造の(1,1,0)面の配向性が面心立方構造より高いことを示しているが、本研究以前に報告されていたアモルファス金属基板に関する結果とは大きく異なっている。作製した膜を用いて、SQUID磁化測定装置により、膜の磁気特性を評価し、配向特性との相関や磁気特性の膜厚依存性などを調べている。
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