レーザーアブレーション機構解明のためのナノ秒形態観察・分光システムと解析法の確立

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 07554063
• 応募区分: 試験
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 増原 宏 大阪大学, 工学部, 教授 (60029551)
• 研究分担者: 岡 宏一 大塚電子(株), 研究開発部, 研究開発1部長 ; 福村 裕史 大阪大学, 工学部, 助教授 (50208980)
• キーワード: ナノ秒干渉出像計測 / ナノ秒写真観察 / レーザーアブレーション / 高分子フィルム / 高密度励起 / レーザー誘起膨張 / 時間分解マッピング / 時間分解分光法

研究概要

紫外レーザーパルスにより固体を高密度に励起すると、昇温、分解が集中的に起こり、結合が切れ、塊として、飛散する。これはレーザーアブレーションと呼ばれ、光と物質の相互作用に基づく高密度励起光化学過程として基礎的にも重要である。この固体の形態変化ダイナミクスを取り上げ研究した。本年度は高分子フィルムを取り上げ時間分解分光法による分子論的、動的な光反応としての測定解析と、時間分解写真、及び干渉画像計測による形態変化の観察を合わせて行うシステムと解析方式を開発した。同時に測定して得られたナノ秒時間分解能を持つ両データを検討してアブレーション機構の解明をはかり、実用への展開をはかり、以下の成果を得ている。(1)系の検討。光化学的にデータの揃った分子を取り上げ、高分子フィルムに添加し、それらの分子を励起してアブレーションを引き起こす。分光測定と形態変化の二次元イメージ像を同時測定し、これに基づき物性変化、励起状態、中間体毎の時間分解マッピングを得た。フィルムや化合物の種類、レーザー出力、励起波長との相関を調べ特徴を明らかにした。(2)レーザーアブレーション解析により新しい概念を得る。添加分子の発光、無輻射遷移の収量、寿命、光化学反応プロセスとの関係を調べ、又比熱、熱伝導率など物性値と比較検討し、両者を合わせて明らかになるアブレーションのミクロ過程のモデルを提出した。(3)ソフトの開発。膨大なデータ量が必要であるイメージ像の解析に適したソフトプログラムを開発した。(4)実用的にも意味ある系に当てはめる。燃焼のモデルとなるニトロセルロース、飛散物による汚れが少なく微細加工に最適なトリアゼノポリマーのアブレーションダイナミクスを明らかにした。

研究成果

• [文献書誌] Y.Tsuboi,S.Sakashita,K.Hatanaka,H.Fukumura,and H.Masuhara: "Photothermal Ablation of Polystyrene Film by 248nm Excimer Laser Irradiation:A Mechanistic Study by Time-resolved Measurements" Laser Chem.Vol.16. 167-177 (1996)
• [文献書誌] H.Furutani,H.Fukumura,and H.Masuhara: "Photothermal Transient Expansion and Contracion Dynamics of Polymer Films by Nanosecond Interferometry" J.Phys.Chem.,. Vol.100 No.17. 6871-6875 (1996)
• [文献書誌] LS.Bennett,T.Lippert,H.Furutani,H.Fukumura,and H.Masuhara: "Laser-induced Microexplosions of a Photosensitive Polymer" Appl.Phys.A,. Vol.63. 327-332 (1996)
• [文献書誌] H.Fukumura,Y.Yoneda,H.Takahashi,and H.Masuhara: "Photothermal Dynamics at the Surface of Copper Phthalocyanine Solid Revealed by Time-resolved Regular Reflection Spectroscopy" Chem.Lett.509-510 (1996)
• [文献書誌] H.Fukumura,Y.Kohji,H.masuhara: "Laser implantation of fluorescent molecules into polymer films" Applied Surface Science. Vol.96-98. 569-571 (1996)