研究概要 |
ビニル芳香族化合物は、ポリマー等の原料として重要な合成中間体である.しかし,芳香族化合物を直接ビニル化する効率的な方法が知られておらず,一般には数工程の合成が行なわれている.例えば,スチレンの工業的合成は,ベンゼンからエチルベンゼンを経由し,脱水素化している.これがベンゼンから直接合成できれば,反応効率の点からはもちろん,省資源的にも意義は極めて高い.本研究の最終的な目的は,これまで困難とされてきた″芳香族化合物の触媒的直接ビニル化反応″を実用化プロセスとして実現するものである.本申請ではその一段階として,フェノールの直接ビニル化の実用化と新しいポリ(ビニルフェノール)類の用途開発の研究を行っている.本年度は以下の成果が得られた. 1)フェノールのアセチレンガスによるビニル化反応について,基質の構造と反応性について継続して調べた.電子供与性基を有するフェノールの反応を検討し,ほぼ完成した.また,この方法によって,従来全く知られていなかった各種ビニルフェノールの始めての合成に成功した.ハロゲンやアルコキシカルボニル,ニトロなどの電子吸引性基をもつフェノールのビニルのめどがほぼたった. 2)フェノールの2,6-ジビニル化をほぼ完成した.単純な構造の化合物であるが,Chem. Abstr.に記載のない新規化合物群である.架橋剤,交互重合体,ラダーポリマー等の合成を検討している. 3)アニリンのビニル化も行えることがわかった. 4)GaCl_3を用いる芳香族炭化水素のβ-シリルビニル化を完成した.脱シリル化によって,ビニル芳香族化合物が得られた.反応機構的には,新しい有機カリウム中間体が生成していることを明らかにした.
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