本研究はマウス膵臓に微量存在し、重要な生理作用を営んでいるプロラクチン受容体タンパク質あるいは受容体遺伝子の発現様式を調べることを主な目的として計画された。まず微量物質の検出法や定量的解析法の確立を目指す第一歩として、受容体cDNAおよびcRNAを競合試薬として用いた液相競合RT-PCR法によるプロラクチン受容体mRNAの定量法を確立した。この方法を用いて単離培養膵島におけるプロラクチン受容体mRNAの発現に対する種々のホルモンの影響を調べ、受容体mRNAはプロラクチン自体によって正の発現制御を受けていることを明らかにした。次にプロラクチン受容体にあるいくつかのサブタイプのmRNAの量比を定量する簡易法「One-sided competitive PCR法」を開発し、培養膵島におけるプロラクチン受容体mRNAの発現様式の研究に適用した。その結果、膵島では肝臓と異なり長型とよばれる機能型のmRNAが多く、プロラクチンの作用によって、この長型が正の発現調節を受けていることが明らかとなった。この液相PCR法を発展させたこれらの定量法は、子宮や肝臓など他の組織におけるプロラクチン受容体研究、さらにはプロラクチン受容体以外の遺伝子に関する研究に応用され成果を生んでいる。 次いで、組織切片およびメンブレン上でのmRNAとタンパク質の高感度増幅法を確立することを試みた。これまでのところメンブレン上でのPCR法を用いたDNAの検出例はまったくない。これは組織切片上と異なり、メンブレン上ではDNA新生鎖が物理的に留まることがなく、通常は液相に流出してしまうためと思われる。そこで予めメンブレン上に固定したプライマーを用いる方法を着想し、すでに固相でのPCR法によるゲノムDNA断片の検出することは可能にしたが、mRNAの検出を成功させるには至っていない。現在は、mRNA・cDNAを保持しつつ、逆転写反応の効率を向上させるような反応条件を模索している段階である。
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