本研究では我々人類という一生物種の持つ遺伝的多様性を把握し、将来に遺すことを主たる目的とし、それに必要な保存・管理システムの開発をおこなっている。アジアの中の日本という立場から、アジアにおける「細胞・遺伝子銀行」を、既に得られている試料とあわせ、設立することを目指した。 昨年度に引き続き、リンパ球株化法の検討と、過去に収集された微量試料からのDNA抽出・増幅法の開発をおこなった。リンパ球株化法を工夫した結果、採血後1週間保存した血液からも90%の株化効率を得ることができた。また、用いる血液量は1ccまで節約することができた。費用の点に関しては、欧米で1検体当たり200ドルかかるところが、現在6000円代まで軽減された。このことは経費の点から未だこの領域に参入していない国内外の研究者にとって朗報である。以上の結果、これまでに20民族800検体、すなわち、アメリカ主導型で計画されているヒトゲノム多様性プロジェクトが目標とする1割近くをすでに達成したことになる。
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