アクチニウム-227(^<227>Ac)は、^<235>U壊変系列に属する半減期21.7年の核種である。同程度の半減期(22.3年)をもつ^<238>U系列の^<210>Pbが沿岸堆積物の年代測定、海水中重金属元素のトレーサー、あるいは深海堆積物の生物撹乱速度の決定などに広く用いられているのに対して、自然界の^<227>Acに関する研究は極めて少ない。その理由は、自然存在度が低く、また安定同位体がないことから簡便な高感度分析法が開発されていないことによる。そこで本研究は、ガスフロー回路を用いたラドン-219(^<219>Rn)検出による新しいカウンター試作し、その性能を向上させることにより、実用可能な227Acの分析システムを開発することを目的とした。 まず2個のサイズの異なるα線シンチレーションセル(特注)、光電子増倍管(浜松フォトニクス)および計数システム(応用光研)からなる気体用α線計測システムを作成した。このシステムに^<227>Acおよび^<228>Raを吸着させてマンガン・ファイバーとフローセルの間を回路で連結し、ヘリウムを循環させることにより短寿命気体核種の^<219>Rnと^<220>Rn(半減期、54秒)をα線シンチレーションセルに導き計測を行う。ヘリウム気体の循環速度、シンチレーションセルの容器、遅延回路の長さを変え、二つのセルでそれぞれ^<219>Rnと^<220>Rn計数の最適条件を見出すための諸実験を行った。その結果、この計測システムで^<222>Rnの妨害をあらかじめ気体パ-ジで取り除くことにより、充分^<219>Rnと^<220>Rnの分別計測が可能であることがわかった。今後は、さらに感度を上昇させる実験を行い実用化のめどを得ることが課題として残っている。
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