本研究では、電位感受性色素を利用して、昆虫神経系の多数のニューロンの電気活動を少なくとも72時間にわたって記録する方法を確立した。電位感受性色素としてはRH414を用い、組織内への直接注入により良好な染色を行うことが可能となった。光学系としては、Olympus落射実体顕微鏡(BX30MF)を用い、対物レンズには作動距離が長く、開口数の大きい蛍光用UMPlanFIを採用することで、安定した光学測定が行えるようになった。 長時間記録用ソフトウエアとしては次ようなものを作成した。制御用パソコンからGPIBにより光量差分増幅装置(Deltaron)を駆動させ、データの収録、さらにパソコンハードディスク状へのデータの書き込みを行う。1度の計測で約50MBのデータが生ずるため、この作業には約8分程度を必要とする。大量のデータへの対応は大容量のハードディスクを使うことで対応した。また、記録時のカメラ利得、アンプ利得、露光時間、等の細かい設定は、光量差分増幅装置(Deltaron)側で設定する。これら一連の動作を電気刺激装置からの外部トリガーパルスをパソコンに与えることで繰り返し行うこととし、原理的にはGPIBを介してデータを書き込む時間を除けば、ほぼ無限に実験の自動継続が可能となった。 膨大なデータを解除するために、2種のプログラムを作成した。一つは、各画素にごとの平均明度を記録された全フレームについて求めるもの。他の一つは、各画素ごとに閾値を超えて変化した場合の数を、記録された全フレームについて求めるものである。これらの結果は、各計測点ごとに1フレームずつ画像データとして書き込み、疑似カラー表示するようにした。これらの解析法により、神経系のある領域の電気的活動性の時間的変化を捕らえることができるようになった。
|